『IKKOAN』 水上力 IKKOAN制作委員会・著

和菓子を世界へ!
今や日本を代表する和菓子職人
水上力さんが七十二候を和菓子で表現

水上さんを初めて知ったのは、
私が23歳、京山さんで修行中のとき。
その時のエピソードは、
に書きましたのでここでは繰り返しません。
以来、20年以上私淑しております。

業界紙「製菓製パン」の取材記事を中心に、
dancyu 、Cafe Sweets など、
取材記事をすべて切り抜き、
それらをすべて自作の年表に落とし込んで、
水上さんが何歳の時に
何を思い、何をしたのか、
事あるごとに眺めています。、

そんな水上ファンの私にとって、
忘れることのできないエピソードを紹介します。

いつものように、アポも取らずに突然伺ったところ、
なんとテレビの取材が入り、撮影の真っ最中でした。
一真庵の柳瀬さんなど、
優秀なお弟子さんを何人も育成した水上さんですが、
その時はたまたま一人で取材を受け、
てんてこ舞いしています。
「よかったら手伝っていくかい?」
このとき初めて、水上さんの仕事・技を
間近で一日中拝見することになるのです。

その時のVTRは今でも宝物です。
インタビューの中で
「和菓子は先人から脈々と受け継がれ、磨かれてきました。
私もその一点に過ぎず、自分の持っているものは、
すべて次の人に伝えたいと思っています」
と答えています。

「次の人」というのは、
普通はお子さんやお弟子さんですが、
水上さんの凄いところは、
和菓子に対する情熱を感じる人であれば、
職業や国籍を超えてオープンなところです。

パリでゼロから苦労して起業されて、
今では世界を代表するパティシエ
青木定治さんもその一人です。

まだ青木さんが日本にお店を構える前の2004年。
水上さんと青木さんのコラボ・スイーツ
「我亦ミルフィユ」
の発表は衝撃的でした。

和菓子関係者だけではなく、
日本中のパティシエや洋菓子愛好家が
水上さんに注目することとなります。

トップ・パティシエしか入会を許されない
ルレ・デセール協会の25周年記念式典で、
和菓子のデモンストレーションを披露すると、
遂に国境を越えて、
外国人パティシエやシェフが、
和菓子の魅力に魅了されるのです。

【和菓子を世界へ!】

2008年にパリで和菓子の紹介をしたのを皮切りに
ロサンゼルス、バルセロナ、ミラノなど、
世界各地で和菓子の魅力を紹介し
大きな反響を受けてゆきます。

日本にとどまらず、
海外のオーディエンスにまで、
日本文化の魅力を紹介する想いが、
今回の著書「IKKOAN」に結実しています。

・日本人の美意識を「七十二候」の菓子で表現
・解説は日・英・仏の三か国語で
・制作費の一部はクラウド・ファンディングで

など、和菓子職人として日本初の挑戦の連続。
着想10年、制作5年と、
ご出版までの道のりは、
決して簡単ではなかったと思います。

本書だけでなく、
水上さんの生き方そのものが、
私にとって人生の指針となっています。

私も先人の知恵に敬意を払い、
大切な和菓子文化を次の人に、
世界に!
お伝えできるようになりたいものです。

素晴らしい本をありがとうございます。

【文責 宮澤 啓】

---------------



『IKKOAN』

水上力・著 / IKKOAN制作委員会
制作統括:南木隆助



---------------







本書の紹介は「宮越裕生」さんのコラムが、写真と言い文章と言い秀逸です。
リンクで紹介しようと思ったのですが、まれにリンク先の記事が無くなったりすることもありますので、備忘の意味も込めて本ブログにコピーで保存させて頂きます。
↓以下の記事はすべて宮越裕生さんの文章です。↓


日本の和菓子を世界へ!

和菓子職人・水上力さんの

ブランドブック「IKKOAN」発売

2015年11月24日

日本の和菓子を世界へ!「一幸庵」水上力のブランドブック「IKKOAN」発売
東京・小石川にある和菓子屋「一幸庵」。店主の水上力(みずかみちから)さんは京都・名古屋で和菓子職人として修業を積み、1977年にお店を開き、以来、この地で和菓子をつくり続けています。
日本の和菓子を世界へ!「一幸庵」水上力のブランドブック「IKKOAN」発売
じつは水上さん、ヴァローナ・ジャポン・エコール東京やフランスの「サダハルアオキ」「ジャン・シャルル・ロシュ」をはじめとするパティスリーメゾンなどとコラボレーションを行っており、その存在を世界にも知られるお方。
今年の冬、そんな水上さんの和菓子の世界を伝える本「IKKOAN」が出版されました。紹介されているのは、72候(しちじゅうにこう)という暦をモチーフにした、72のお菓子たち。
日本の和菓子を世界へ!「一幸庵」水上力のブランドブック「IKKOAN」発売
日本には、四季を立春や夏至、秋分、大寒などに分けた二十四節気というものがあり、それを更に細かく分けたものを、72候と呼ぶのだとか。72候には、「菜虫化蝶(なむしちょうとなる)」や「竹笋生(たけのこしょうず)」などのように、その季節の情景や旬を表す、美しい名前がついています。
日本の和菓子を世界へ!「一幸庵」水上力のブランドブック「IKKOAN」発売
水上さんは、そんな季節をひとつひとつ、“竜安寺の石庭のように小さくも美しい和菓子”に凝縮しました。
たとえば1月15日〜1月19日までを指す「雉始雊 」(きじはじめてなく)は、雄の雉が甲高く鳴き、雪のうえに降り立つ頃。
日本の和菓子を世界へ!「一幸庵」水上力のブランドブック「IKKOAN」発売
水上さんはこの「雉始雊」に合わせて、雉という彩りによって、雪に色が加わる情景を表現。
薯蕷饅頭の生地で漉し餡をはさみ、雄雉に見立てた5色のこなし(白餡を原料にした生地)をのせています。なんとも目に鮮やか!お菓子を通して、古来の日本人と季節のつき合い方にふれられるようです。
この本を手がけたのは、クリエイティブディレクターの南木隆助さん、アートディレクターの川腰和徳さんをはじめとするクリエイティブチーム。
きっかけは、一幸庵のお菓子を食べて育った南木さんが、水上さんが後継者不足の問題を憂えているという話を聞いたこと。そこで、和菓子業界を盛り上げていきたいと水上さんの仕事を世界に紹介する日仏英の三か国語によるブランドブック「IKKOAN」を企画しました。
本書の出版費用の一部はクライドファンディングで集められたのだとか。今後は海外の美術館関係者に向けてプレゼンテーションなどを行ない、和菓子をテーマにした展覧会の実現を目指していくそうです。
2013年に和食がユネスコの世界文化遺産化に認定され、世界的に日本食ブームが起こりましたが、和菓子職人に注目が集まることはほとんどなかったのだそうです。もしかしたらこの次は、和菓子にスポットライトがあたるかも。外国の方へのプレゼントにも喜ばれそうですね!
「IKKOAN」
ハードカバー 198ページ
価格 2990円(税別)
フォトグラファー 堀内誠
プロデューサー 佐藤勇太
取り扱い 一幸庵、HMV&BOOKS TOKYOほか
菓子調進所 一幸庵
住所 東京都文京区小石川5-3-15
電話 03-5684-6591
アクセス 東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅徒歩5分
writer profile
Yu Miyakoshi
宮越裕生
みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。

コメント

人気の投稿