『和菓子さろん』 野上千之・著

虎屋一筋53年!
虎屋450年の歴史と3500種類の菓子について、
後世に伝えるべき要点をまとめた集大成の書

著者の野上さんは昭和18年、
戦争真っ只中に虎屋に入店されています。
以来、戦中、戦災、復興を、
虎屋とともに歩まれた方です。

肩書は「前・虎屋文庫長」となっていますが、
戦中戦後の製造部から始まり、
販売・庶務・流通・新工場建設委員長・
社長室・京都支配人とものすごい経歴です。

職人、店員、マネージャーと、
和菓子の製造小売りに関わる
あらゆる仕事を成し遂げた方です。

要は、職人として自ら作れる方が、
虎屋の貴重な歴史的文献と10年間も
真剣に向き合ったうえで書かれた1冊なのです。

あとがきの中で、なぜこの本を書こうと思われたのか、
というお話があります。

その理由のひとつはお菓子の「菓銘」。
葡萄型のお菓子に「葡萄」という菓銘は、
特に茶席菓子の場合、とても野暮です。

菓銘を聞いてなんだろうと疑問を持ち、
由来や背景を説明して納得いただくのが
茶菓子の世界です。

その菓銘、
虎屋さんだけで3200種類もあり、
そのほとんどが、
背景、由来、歴史について、
何ら説明がなかったことから、
その分類、解説を試みたのが、
本書執筆の原点だったそうです。

本書の中から、私がもっとも影響を受けたのが
「岡太夫」
という菓銘の和菓子です。

実は、「岡太夫」は「蕨餅」(わらびもち)です。
なぜ岡太夫が蕨餅なのかは、
本書をお読みいただくとして、
私が注目したのは、
「名菓の消滅」と題した最終章です。
著書より一部抜粋します。

P288 せっかく古くより継承されてきた蕨粉を使用した本来の蕨餅が、今消滅の寸前にある。
 菓子業界としても、この伝統ある名菓をなんとかして後世に残し伝えゆく責任があると思う。

私自身は、この一文に心打たれて、
本物の「わらびもち」を後世に残したい!
と決意を固めるきっかけとなりました。

私にとっては、和菓子職人としての
生き方を変える程、影響を受けた1冊です。

【文責 宮澤 啓】

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