2013年6月27日木曜日

『日菓のしごと 京の和菓子帖』 日菓・著


京菓子は宮中行事や茶道など
高貴な方々の雅な食文化として発展してきました

意匠は絵図帳に記録されて
300年以上脈々と受け継がれ、磨かれ
現在もなお作り続けられています

中山圭子著 江戸時代の和菓子デザインより

菓銘は単なる名前にとどまらず
1000年以上前の和歌などに起因するものも多数あり
菓銘を聞いただけで
秘められた和歌を想起するのが
和菓子を供される雅人の教養とされていました

高貴な京菓子を
デザイナーの視点から
日本文化を代表する「食べられる芸術」
という視点で編纂された写真集が
『和の菓子』

この本に感動して和菓子の世界に飛び込んだ
2人の女性和菓子職人の創作活動が
日菓さんの原点だという

しかし、和菓子が高貴な方だけの
密やかな楽しみではあまりにももったいない

普通の庶民でも、
子供でも、女子高生でも、お年寄りでも、
見て美しく、食べておいしい
日常の楽しみの一つになって欲しい

そんな想いが日菓さんのお菓子から感じられるのです
でも、単に斬新だったり、
カジュアルだったりするのではなく、
あくまでも京菓子の伝統と技法を用いて表現しています

日菓さんが創作した80点の作品の中から
たった1点だけ紹介するとしたら
『アポロ』

膨大な手間暇をかけすぎたら
それは芸術かもしれないけど菓子でなはい

これ、京菓子だなって思いました
シンプルで抽象的な意匠に
旬の菓銘を添えることで
召し上がる方に無限の広がりを感じてだく

自分はとても真似できない感性のお二人に
和菓子の新しい可能性と楽しさを教えて頂いた一冊
今後のご活躍もとても楽しみです

日菓さんのHP
 
あまりにも可愛らしい

日菓さん紹介記事
Vantan FJapon アイカーブ2008

そうだ 京都、行こう。 京の人に聞きました

朝日放送 LIFE ~夢のカタチ~
http://asahi.co.jp/life/backnum/130330.html



日菓さんの存在は、恥ずかしながら知らなかったのですが
調べているうちに
注目の女性和菓子職人はまだいることが判明

和菓子店 青洋 青山洋子さん
http://wagasiseiyou.petit.cc/banana/

青山さんも単に和菓子の仕事に邁進するに飽き足らず
「個展」を通して作品を発表したり
和菓子作りの講師をやられてりしています

特に錦玉の色遣いが絶妙で心を奪われます

色を喰らう展
http://bizarre-kyoto.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-3220.html

COCON烏丸 リレーコラム Vol.48
http://www.coconkarasuma.com/column/column48.html

episteme 日本の美を求めて Vol.6
http://episteme-net.jp/column2/epiism/vol06.html



日菓さんにしろ、青山さんにしろ
京菓子の技術と教養が基礎にあってこその創作活動です
その根幹を教育された方は
老松の太田達さん
GUCCI オフィシャルブログ
京菓子司 太田達さんと和菓子を作る
http://ameblo.jp/guccijp/entry-11380866097.html
※GUCCIのブログだけあって写真も動画も超高品質

数寄者と評されるほどの
茶人であり文化人でもある太田さんが
日菓さんと青山さんの「技」と「心」のパトロンだ

特に日菓さんほどの人気和菓子ユニットを
「老松」に抱え込まず自由に活動させ
新刊の著者プロフィールにも
ひとことも「老松」を名乗らせない

京菓子文化の新しい扉を開くために
あえてそうしているのだと思いますが
人としての器の大きさに圧倒されます

日菓さんの新刊を通して
青山さんや太田さんに出会えたことにも
本当にありがたいことと感謝いたします

【文責 宮澤 啓】

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『日菓のしごと 京の和菓子帖』
日菓(内田美奈子+杉山早陽子) ・著 青幻舎


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同じ女性和菓子職人としてスタートを切ったばかりの
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2013年6月20日木曜日

『まっちんのおやつ』 町野仁英・著


まっちんとの出会いは2006年
妻と雑貨屋さんでお買い物中だった


大橋歩さんの素敵な季刊誌「Arne」
その中に和菓子が表紙の15号を発見
中を見ると…


雑穀豊富なオリジナリティー溢れる桜餅が
たくさんの写真で臨場感たっぷりに紹介されていました
一応和菓子業界に身を置く者としてだれか気になる…


「まっちん」って誰!?

私が日ごろ読んでいる業界紙などにはまったく登場しない青年
沖縄の製糖工場で働いたり
サトウキビを刈る仕事をしたり
アイガモ農法の生産者のお手伝いなどを重ねる中で
正統派の和菓子修業とはまったくちがう
大地や農業に感謝をささげるような菓子を独学で作り始めたという

参照:伊賀タウン情報「和菓子に夢 自宅に店開く」

まっちんより腕が立つ職人はたくさんいると思う
でも大橋歩さんがArneに登場させた唯一の和菓子職人は
他のだれでもない「まっちん」ただひとり
村上春樹さんや大貫妙子さんと同じステージに彼はいる

大橋さんが紹介した「わらびもち」をつくるまっちん
この記事に私はどれほど勇気づけられたかわからない

私自身もわらびもちが大好きだったが
自分で作ろうとチャレンジしたことはなかった

小石川の菓匠のわらびもちが大好きだった
他店で修行中の弟子でもない私を
仕事場に招き入れては和菓子に賭ける情熱を語って下さった

冬でも汗だくでわらびもちを煉るその仕事ぶりは
ちょっと神々しく見えた
あり得ないほどやわらかいわらび餅とこしあんの絶妙な調和
自分なんかには作れないんじゃないかと思っていた

そんな気持ちの時にこの記事に出会った
素人さんのような家庭の道具でわずかな量を作っている
しかも誰から教わったわけでもなく独学で!

2006年、私自身も覚悟が決まりわらびもちを作り始めた
長年憧れ、食べ続けてきた想いを込めて


2010年、愛読しているCafeSweets誌に
まっちんが再び登場しているのを発見


まっちんは「招聘」されていた!
(そう記事に書いてある)
全国にあまたいる和菓子職人のうち
「招聘」される方がいったい何人いるだろうか?


そして2013年 まっちんは出版した!
ゼロから独立起業してたったの10年、37歳の若さで

本書の特徴の一つは「写真」だと思う
農家の台所で撮影したような「ほの暗さ」が
まっちんの菓子の雰囲気と良く合っている
同時期に刊行された「日菓」さんの写真と比べると
その違いが鮮明になる

一番心を打ったのは「粒あん」に添えられた文章
あんこ作りを独学していたころ
たくさんの本を見て、たくさん試しました。
でもあるときから本をみるより
「もっと豆をみないといかん」と思ったのです。

まさにその通りなんです。
本に書いてあるレシピは音楽でいえば楽譜
演奏する者の技量と志が
菓子の質を決めるんだと思う

農業や農家の皆さんへのあたたかい想い
大地への感謝を捧げるような菓子が
まっちんの菓子

またまっちんを支えたサポーター
「チームまっちん」の存在も素晴らしい
武骨で不器用そうな彼を出版にまで導いたのは
彼の魅力+チームまっちんの真摯な応援だと思う

少しだけリクエストがあるとすれば
・レシピ本にしては工程写真が少ない
・Arneで表紙を飾った雑穀でつくる桜餅がいない

読むたびに背中を押してくれる、心あたたまる一冊です

【文責 宮澤 啓】

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町野仁英・著 WAVE出版


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